「病変の首座」がどこに在るか?それをハッキリさせることは、とても大切な我々の仕事です。
例えば、“長引く咳”の原因は沢山ありますが、仮に原因が明らかになっても、その原因そのものを速やかに取り除くことは困難です。肺癌、肺炎、喘息などの例を挙げただけで、根本の原因対策に時間がかかることはご理解いただけると思います。しかし症状は待ってくれません。ひどい時は咳で寝られない場合もあります。一刻も早く辛い症状を抑えなければ!
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そこで重要なのは「病変の首座」の見極めです。 喉頭の炎症が主体である症状に対し、気管支の病変には有効な吸入薬を使用すると、効果が無いだけではなく、声帯が腫れて声が出なくなる、沈着したステロイドの影響で感染が悪化する、などの弊害が現れる場合があります。 逆もまた真で、気管支の炎症が主体なのに、喉頭炎で使える吸入薬を使用しても、症状の改善は期待できません。今年は黄砂の飛来から始まって、現在も進行中のエアコンのカビに至るまで、長引く咳についての話題が尽きない年でした。
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長引く咳と並んで、意外な盲点が潜んでいるのは“腹痛”です。原因となり得る腹部臓器は、主なものだけでも胃、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、脾臓と多彩ですが、これらが原因の腹痛であれば、セット採血で補足できます。 実は腹痛の原因で最も怖いのは腹部臓器ではなく血管です。腹部大動脈瘤や動脈閉塞症という病名をご存じの方も多いのではないでしょうか?これらの診断に最も威力を発揮するのが腹部超音波検査で、今ではミリ単位で正確に血管径を測れるようになりました。